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症例16:肢の色素斑(パグ,3歳齢,♂)

1歳頃より略全身にかゆみや湿疹がみられ近医受診。外用ステロイド、抗ヒスタミン薬、シャンプーなどで改善するも、再発を繰り返し適宜加療。1年前より四肢に黒い皮疹がみられ徐々に拡大、精査目的にて平成11年12月15日当科紹介受診。四肢遠位を中心に黒褐色の色素斑(写真)や丘疹が散在し、また軽度ながら脂漏、顔間擦部の発赤、外耳道の苔癬化がみられた。
臨床診断のポイント
色が濃くなって褐色、黒褐色、紫灰色などを呈した斑を色素斑と呼びます。そのほとんどがメラニンの増加であり、メラノサイトの増殖性疾患とメラニン色素が増加する内分泌疾患や反応性変化(感染・炎症、物理的刺激、表皮増殖疾患など)に起因しています。内分泌疾患では斑にとどまらない色素増加を認めることが多く、これを色素沈着と呼称しています。自験例では色素斑に隆起がみられることから、メラノサイト増殖性疾患、表皮増殖疾患が予想され、犬種より乳頭腫ウイルス感染性色素性局面が疑われました。また色素斑に先行してみられるかゆみですが、発症年齢と犬種より先天的要因(本態性脂漏症、アトピー体質など)、それに起因する感染症(ブドウ球菌、マラセチア)が予想されるとともに、長期薬物療法による身体的影響が懸念されました。
初診時方針のポイント

メラノサイトと表皮の増殖疾患を診断する場合、皮膚生検が有用です。さらに合併症の評価として、アトピー素因の評価となる血清IgE検査(アラセプトパネルテスト)、薬物の関与を考慮した血液検査、本態性脂漏症と二次的な感染症を考慮した抗菌薬の内服、さらに抗菌作用や脱脂作用を有したシャンプーによる治療的評価などが有用です。
組織では角質肥厚を伴う広範かつ不規則なつぼみ様表皮肥厚が観察され、顆粒層の肥厚と巨大ケラトヒアリン顆粒の散在、さらに基底層を中心としたメラニンの増加が観察されました。乳頭腫ウイルス感染性色素性局面と呼ばれる疣贅(いわゆるいぼ)に合致した所見でした。