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症例17:躯幹の膿疱
(ミニチュアダックス,9歳齢,避妊♀) 躯幹のかゆみが生じ平成18年5月1日A動物病院受診、躯幹背側に膿痂疹の散在を認めステロイド注射、抗生剤内服、外用配合薬等で治療後、ケフレックス、プレドニゾロン0.5mg/kgSIDを加え、同年6月8日当科紹介受診。躯幹背側を中心に著しいかゆみと落屑性紅斑を認めた。躯幹や耳介には遠心拡大性の環状紅斑を認め、中心性に色素沈着や鱗屑痂皮が観察された。さらに紅斑内輪に沿って弧状ないし孤立性の膿疱が認められた(図)。
![]() 臨床診断のポイント
隆起性皮疹のうち膿性の内容物を持つものを膿疱と呼んでいます。通常黄灰色を呈しています。周辺には先行する紅斑、また続発疹として壊れた包膜は鱗屑、内容は痂皮、そして基底はびらんを呈します。本皮疹は脆弱なので観察の機会は少なく、一般に紅斑や続発疹を主体としています。この変化は、炎症細胞の表皮内侵入に起因し、病因は毛包性と非毛包性に大別されます。前者では毛包性感染症が、また後者では非毛包性感染症、免疫介在性疾患などがあります。自験例では毛包に限定せず遠心性に拡大する非毛包性であり、感染症として膿痂疹、免疫介在性疾患として落葉状天疱瘡などが疑われます。
初診時方針のポイント
感染に起因する膿疱では膿疱内容細胞診で変性好中球、細菌貪食像を観察でき、さらに細菌培養検査で起因菌を分離することができます。通常はブドウ球菌が関与していることから、結果がでるまで抗生剤としてセファレキシン15-20mg/kgBIDによる治療的評価が有用と思われます。検査成績および治療的評価で細菌感染が否定的と考えられる症例では、落葉状天疱瘡を視野に入れた皮膚生検が有用です。この場合免疫学的異常を評価する必要があることから、ホルマリン固定による通常の病理組織検査とともに、凍結組織を用いた蛍光抗体直説法が不可欠です。なお落葉状天疱瘡では、膿疱細胞診で変性に乏しい好中球浸潤と共に棘融解細胞が検出されます。 |