Top page > Members Only > 症例2: 腹部の丘疹(アイリッシュ・セッター、1歳齢、♀) |
||
症例2: 腹部の丘疹 (アイリッシュ・セッター、1歳齢、♀) 全身に痒み行動と赤いブツブツがみられ、いずれも徐々に悪化し平成12年3月11日近医受診。プレドニゾロン、抗ヒスタミン剤、タールシャンプーなどで治療されたが改善なく同年6月23日当科紹介受診となった。約3週間前に発情出血がみられた。頸部腹側、腋窩、腹部、鼡径を中心に丘疹、膿疱、小紅斑がみられた(写真)。 ![]() 臨床診断のポイント
発疹は丘疹が主体となっています。丘疹とは直径0.5~1cm以内の限局性隆起で、一般に表皮および真皮浅層の炎症によるピンク色や紅色を呈しています。疾患として毛包性感染症(膿皮症、ニキビダニ症、皮膚糸状菌症)、非毛包性にノミアレルギー性皮膚炎や疥癬などで認めます。痒み行動と皮疹の程度が同調する場合には感染症が予想され、疫学的にはまず膿皮症に注目する必要があります。なお犬の膿皮症では常在菌に相当するStaphylococcus pseudintermediusによる発症が圧倒的に多く、その背景として皮膚バリア機能の低下が関与しています。自験例では気候的要因(高温多湿)とともに、犬種固有の皮膚機能(長毛)、発情による皮膚機能や行動の変化などの関与が疑われました。方針のポイント
膿皮症を疑う症例では、他の感染症を除外する検査として毛検査、皮膚掻爬検査、真菌培養検査、また菌要素の評価として随時細胞診や細菌培養検査・薬剤感受性試験などが実施されます。また基礎疾患に配慮した検査を実施することもあり、内科疾患の評価が必要な場合には血液検査などが汎用されます。なお膿皮症(S. pseudintermedius感染症)の検討として、セファレキシン20 mg/kg 1 日2回投与による治療的評価も有用されます。ただし、最近セファレキシン耐性株が出没していることから、検査と抗菌薬処方のタイミングには注意が必要です。参考文献: 獣医臨床皮膚科 8; 52, 2002. |