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症例27:頭の脱毛
(ミニチュア・ピンシャー,9ヵ月齢,避妊♀) 平成20年4月に購入、当初より鼻水やくしゃみがみられ近医にて6月頃まで対症療法が実施された。同年7月中旬眼の間付近に痒みや発赤を伴わない脱毛が生じ再診、外用薬により治療されるも脱毛が拡大、同年11月28日当科紹介受診。 ![]() 臨床診断のポイント
自験例では限局的な脱毛、いわゆる脱毛斑がみられます。脱毛は先天性および後天性に生じますが、脱毛斑は通常後天的に生じます。その病因として外傷(すれ、自傷)、局所刺激(分泌物、外用剤)、局所身体因(感染症や腫瘍)などを重視しています。自験例の皮疹は外傷性脱毛ではなく、さらに腫瘍を示唆する徴候に乏しいことから、局所刺激と感染症に注目すべきでしょう。皮疹中央の皮膚は、萎縮傾向(繊細な皺を伴う光沢)と血管の明瞭化を示し、さらに辺縁を中心に丘疹、さらに脱毛との境界には紅斑と鱗屑がみられたことから、感染症を伴うステロイド皮膚に合致していました。病歴からは、先行する疾患を誘因とした局所微小気候の変化による脱毛、その後使用したステロイド外用薬による発症が予想されました。 初診時方針のポイント
薬物と皮疹の関係を探るべく治療歴を確認したところ、0.1%トリアムシノロンアセトニド配合クリームが25g以上(1本5gのチューブを5本以上)使用されていました。そこでグルココルチコイドの全身への影響に配慮し、血液検査、血液化学検査、ACTH負荷試験、さらに感染症に配慮し毛検査や皮膚掻爬検査によるニキビダニや皮膚糸状菌の鏡検、ウッド灯検査、真菌培養検査、細菌培養検査や薬剤感受性試験を実施しました。初診時治療の方針として上記外用薬の使用を中止はもちろんのこと、膿皮症の治療的評価(抗菌シャンプー、抗生剤)の検討が必要です。 |