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症例31:肉球の皮疹
(ラフ・コリー,9歳齢, 避妊♀) 既往歴として再発性膿皮症あり、平成21年6月にこれまでと同様の皮疹が躯幹背側に新生しN動物病院受診、これまで有効であったセファレキシンが奏効せず、皮疹は鼻梁や四肢端に拡大、同年8月18日当科紹介受診。躯幹背側を中心に鱗屑痂皮を伴う紅斑や丘疹を認め、四肢肉球では辺縁を主体に角化性紅斑が観察された。 ![]() 臨床診断のポイント
肉球に生じる皮疹では、物理的(負重、外傷)および生理的(老化)な反応を中心に、その構造や機能的特性を基底に生じる皮膚疾患や全身疾患に留意します。皮疹の性状は個々の病態や疾患によって多彩ですが、続発疹として角化性皮疹や潰瘍等を呈す傾向があります。したがってまず皮疹の分布に注目します。皮疹が偏在する場合は外傷、感染、腫瘍等、規則的に分布する場合には免疫介在性疾患、代謝異常、角化症(負重、老化)等に注目しています。自験例は後者であり、さらに鱗屑を伴う炎症性皮疹が躯幹や鼻梁にも観察されました。耐性菌による膿皮症の関与が否定的であれば、免疫介在性疾患(天疱瘡、エリテマトーデス)が予想されます。なお脆弱な原発疹は肉球辺縁に集簇しやすく、躯幹に膿皮症を思わせる皮疹がみられることを考慮すると、落葉状天疱瘡が疑われます。 初診時方針のポイント
免疫介在性疾患の診断には皮膚生検による病理検査が不可欠です。その際免疫学的評価として蛍光抗体検査が有用です。合併としても配慮すべき感染症の評価には、細菌培養検査、真菌培養検査、皮膚掻爬検査、また薬剤感受性試験に基づいた抗菌薬の投薬が必要でしょう。肉球の生検には少なくとも鎮静が必要であり、それに先立って血液検査(血算、血液化学)、また鑑別であるエリテマトーデスの評価には尿検査、X線検査、抗核抗体検査等が有用です。自験例では感染症を示唆する所見を認めず、生検で棘融解による角層下膿疱がみられ、蛍光抗体直接法で表皮細胞間にIgGの沈着を認めたことから、落葉状天疱瘡と診断しました。 |