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症例32:水疱を思わせる隆起
(チャイニーズ・シャーペイ,8カ月齢, ♂)

平成21年3月台湾にて購入、1ヵ月前より胸に皮膚病が生じ近医受診後同年10月6日当科紹介受診。発症時期にあわせて、細いベルトのハーネスを使用していた。頸部から胸部腹側にかけて下垂する過剰なしわ構造を認め、その領域には水疱を思わせる隆起が局面状を呈していた。

臨床診断のポイント

 皮表から隆起する皮疹は炎症などによる充実性内容と、液体などの貯留に大別されます。後者はさらに透明な内容物による水疱と通常黄灰色を呈した膿による膿疱に細分され、自験例の隆起性皮疹はその色調が前者に合致していました。水疱内容は通常浸出液であり、犬では表皮の薄さも加わり糜燗潰瘍を形成します。したがって皮疹の持続性は非漿液性内容の存在が示唆され、犬種よりムチン沈着症が予想されました。

初診時方針のポイント

 ムチンの評価として針穿刺が有用です。水疱は針穿刺により浸出液が排出され瞬時に潰れるも、ムチンは粘稠性を有した透明内容物として皮疹に挿入した針を抜く際にその先端に糸様構造を呈します。これは皮膚生検により真皮におけるアルシャンブルー陽性物の沈着として認められます。広範なムチン沈着は、本犬種固有の現象に限らず甲状腺機能低下症や先端肥大症における代謝異常、またエリテマトーデスなどによっても生じます。したがって皮膚生検以外に血液検査や甲状腺ホルモン値測定が不可欠です。