Top page > Members Only > 症例39:躯幹の角化性皮疹(ボーダーコリー,12歳齢,去勢♂)
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症例39:
躯幹の角化性皮疹
(ボーダーコリー,12歳齢,去勢♂)
5歳頃から腹部をよく舐めるようになった。近医加療にて改善するも軽快せず、冬になると悪化した。 ![]() 臨床診断のポイント
腹部に毛孔性紅斑や一部に紫斑を伴う丘疹が集簇、同部位には落屑もみられます。紅斑や丘疹は炎症を示唆しており、病因は感染性および非感染性に大別されます。また炎症の部位は毛包性および非毛包性に区分されます。感染性毛包炎では寄生体として細菌、真菌、寄生虫を重視した評価を行います。自験例の皮疹は感染症の定型とは異なり、外傷による非特異な非感染性炎症に配慮が必要です。自験例は以前より腹部を舐める傾向があり、これが発症の起点として予想され、さらにその行動は中年以降に生じ、冬に悪化する傾向がみられたことから、関節炎や代謝異常等寒さにより悪化する身体ストレスの関与を予想しました。 初診時方針のポイント
持続する犬の皮膚病では半数以上で感染症が関与することから、除外の根拠を得るために検査を必要としました。膿皮症に対して細胞診、細菌培養検査、ニキビダニ症に対して毛検査や皮膚掻爬検査、皮膚糸状菌症に対して鱗屑や毛の鏡検と真菌培養検査、さらにマラセチア感染に対して細胞診と真菌培養検査を実施しました。さらに鑑別である外傷性皮膚炎の根拠を得るべく、皮膚生検を実施しました。舐性行動の原因検索として、改めて詳細な病歴の聴取を実施したところ、若い頃に股関節の手術を受けていることがわかり、同部位および腰椎のX線検査、さらに代謝異常の評価として血液検査、甲状腺機能のスクリーニング検査としてT4値測定を実施しました。初診時治療的評価として、念のため二次的な膿皮症に配慮しノルバサンサージカルスクラブ洗浄を指示しました。 |