Top page > Members Only > 症例42:口囲のかゆみ(ジャーマンシェパード,5歳齢,去勢♂)
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症例42:
口囲のかゆみ
(ジャーマンシェパード,5歳齢,去勢♂) 生後6ヵ月頃より痒み行動がみられ、夏に再発を繰り返しながら徐々に悪化拡大し近医にて治療をうけながら平成19年1月当科紹介受診、口囲、眼囲、下顎、脇腹を中心に皮疹がみられた。 ![]() 臨床診断のポイント
口囲に脱毛や色素沈着等を伴う苔癬化(たいせんか)がみられます。苔癬化とは丘疹の癒合により皮丘が高く皮溝が深くなった皮野形成が著明な状態で、組織学的には表皮肥厚や真皮浅層乳頭層に位置する結合織の増生がみられます。これは慢性炎症、あるいは摩擦などの物理的刺激により生じます。自験例の皮膚病は長い経過をたどり、紅斑もみられることから、感染症(ニキビダニ症、膿皮症、いわゆるマラセチア皮膚炎)、いわゆる皮膚炎(アレルギー、アトピー性皮膚炎、外傷)を疑いました。また感染症に関連する皮膚バリア機能の低下として代謝異常の関与、また皮膚炎を誘導する外傷の病因として歯科疾患、眼科疾患、耳疾患、神経疾患、精神因の関与を考慮しました。 初診時方針のポイント
感染症に対する検査(皮膚掻爬検査、毛検査、細胞診、細菌培養検査、真菌培養検査)、また皮膚炎の対応としてIgE検査によるアトピー素因の評価、さらに詳細な観察や諸検査による周辺組織の評価が有用です。治療的評価として、感染症には高濃度クロルヘキシジン洗浄や経口抗真菌薬(ケトコナゾール、イトリコナゾール)、感染症が否定されたいわゆる皮膚炎には痒み掻破サイクルの阻止を目的とした外用ないし内服ステロイドが有用です。また治療的評価として、食物アレルギーに限定しない食物有害反応に配慮した除去食試験を実施したいです。 |