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症例5:鼻の紅斑
(ウエルッシュ・コーギー,2歳齢,避妊♀)

鼻鏡背側の色素脱失を主訴に平成15年8月近医受診、外傷を考慮し無処置経過観察するも悪化、抗生剤で改善なく、プレドニン1錠1日1回投与後皮疹の改善傾向を認めたが、隔日投与により皮疹が新生した。精査目的にて約2週間ステロイドを休薬し、平成16年1月8日当科紹介受診。鼻鏡背側に角化性の色素脱失および紅斑が(図)、また鼻梁に鱗屑を伴う紅斑がみられた。
臨床診断のポイント
 鼻鏡背側に生じる皮疹では、外的刺激(物理化学的、光線)、またその影響を受けた感染症、免疫介在性疾患、代謝異常、角化症、腫瘍、肉芽腫症などに注目しています。自験例の個疹は色素脱失(メラノサイトやその分布領域である表皮基底付近の異常)を伴う紅斑(炎症、血管拡張)を特徴としており、原疾患として感染症、代謝異常、角化症、肉芽腫症は否定的でした。色素脱失を呈す免疫介在性疾患はエリテマトーデスが、また腫瘍では皮膚リンパ腫が鑑別です。自験例は若く、さらに夏発症はエリテマトーデスの光過敏に合致することから、エリテマトーデスが予想されました。
方針のポイント
エリテマトーデスを疑う場合、皮膚生検と罹患臓器の評価が必要です。罹患臓器(特に腎、血液、関節など)の評価には、血液検査、尿検査、X線検査などが有用であり、さらに全身的な免疫異常の評価として抗核抗体検査を実施します。なお二次的な感染症の否定を目的として皮膚掻爬検査、真菌培養検査、抗生物質による細菌感染の評価も行われます。
エリテマトーデスは軽快が難しく、症状にあわせた適正な対症療法が選択されます。鼻に生じた皮膚エリテマトーデスでは外的刺激の管理を重視すると共に、通常は外用療法で対処され、重症皮疹に全身療法が選択される傾向にあります。
参考文献
獣医臨床皮膚科 9;113-134, 2003.