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症例50:広汎な角化性皮疹
(ビアデットコリー,13歳齢,♂)

平成26年7月に腹部の痒みを認め近医受診、シャンプー、抗ヒスタミン薬、さらに外用や内服のステロイド製剤等で治療されるも漸次拡大し転院、セラメクチン、プレドニゾロン20mgでかゆみに改善なく同年9月5日当科紹介受診。略全身の掻破とともに、躯幹腹側とともに四肢や頭部に皮疹を認めた。

臨床診断のポイント

淡黄白色の厚い牡蠣殻を思わせる鱗屑が特徴でした。鱗屑は角質細胞の堆積であり、先天性と後天性に区分されます。自験例は高齢発症であり、後天性として感染症、内分泌を含めた代謝異常、腫瘍に配慮が必要でした。感染症では皮膚糸状菌症や寄生虫症、特にニキビダニ症や角化型疥癬が疑われました。また代謝異常では亜鉛反応性皮膚症、壊死性遊走性紅斑、また薬物療法の影響、腫瘍では皮膚リンパ腫等を考慮しました。ステロイド製剤使用後に悪化していることから感染症や代謝異常が疑われ、さらに角化性皮疹が強調されていること、かゆみが腹部に始まり末梢に強調されていることから角化型疥癬を疑いました。

初診時方針のポイント

角化型疥癬やニキビダニ症の評価には皮膚掻爬検査、毛検査、また皮膚糸状菌症には上記手法による鏡検以外に、真菌培養検査、ウッド等検査、代謝異常には血液検査、甲状腺の評価にはT4によるスクリーニング、副腎機能にはACTH刺激試験が有用です。これら検査結果と経過をみながら、皮膚生検の施行を検討しました。自験例では厚い鱗屑の鏡検により、多数のイヌセンコウヒゼンダニの虫体、虫卵、糞を多数認めました。血液検査ではALPの上昇がみられ、T4はやや低下していました。飼い主と相談の上、ACTH刺激試験を控え、駆虫薬として使用したいイベルメクチンの副作用を評価すべくABCB(MDR)1-1Δ測定を実施しました。結果が出るまで、駆虫薬としてフィプロニルスプレーを使用しました。