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症例51:略全身の膿疱
(ミニチュア・ダックスフンド,7歳齢,避妊♀)

1年前より会陰に紅斑がみられ、さらに昨年より躯幹背側や外耳にも発症、種々の抗菌薬にて治療するも改善せず当科紹介受診。躯幹背側とともに、両耳介内側や外陰部などに皮疹がみられた。

臨床診断のポイント

小さな紅斑がみられ、その中心に黄色液体貯留を思わせる弛緩性の隆起性病変が認められました。紅斑は通常炎症を示唆しています。その中心にみられる液体の貯留した隆起性皮疹は膿疱に合致していました。この膿疱は菲薄な被蓋により内容物の色調が明瞭に観察されることから、角層下ないし表皮内の膿疱が予想されました。膿疱は感染性と非感染性に大別され、実地ではStaphylococcus intermedius group感染を日常的に経験します。S. intermedius groupは宿主と共生し、皮疹分布にも特徴があります。自験例では耳介内側に対称性の皮疹を認め、S. intermedius group感染症の典型とは言えませんでした。非感染性膿疱には自己免疫異常による落葉状天疱瘡があり、典型では鼻梁の皮疹を特徴としています。自験例の皮疹分布は天疱瘡の好発部位に一致せず、いわゆる角層下膿疱症を疑いました。

初診時方針のポイント

S. intermedius group感染の評価として、細胞診とともに細菌培養検査と、薬剤耐性菌に配慮した薬剤感受性試験が必要です。宿主側要因の関与したS. intermedius group感染を疑う事例では、寄生体の複合感染にも配慮しています。特にニキビダニや皮膚糸状菌を考慮し、毛検査や皮膚掻爬による鏡検、あるいは真菌培養検査を積極的に施行しています。また自験例のように、非感染性膿疱症を疑う場合には、その評価として皮膚生検が必須です。その際、天疱瘡に配慮した免疫学的検討として、凍結組織による蛍光抗体直接法や血清を用いた蛍光抗体間接法を実施しています。