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症例54:肩甲の脱毛斑
(フレンチブルブルドッグ,7ヵ月齢,♀) 2ヵ月齢より飼育、間もなく腹部に皮疹を認めた。5ヵ月齢になり顔や頸部に脱毛が生じ近医受診、抗菌薬で治療するも肩甲に拡大し平成27年6月24日当科紹介受診となった。 ![]() 臨床診断のポイント
脱毛症の病態は毛の病的状態、毛包の病的状態、毛周期異常に区分されます。毛の病的状態とは外傷性脱毛であり、皮疹の特徴として外傷負荷脱毛領域と健常被毛領域の境界が明瞭です。毛包の病的状態とは構造的異常による脱毛であり、通常脱毛以外の併発症状を認めます。毛周期とは毛の成長休止を規定するヘアサイクルであり、遺伝的素因とともに身体因や環境因など様々な要因が関与します。毛周期は全身的に規定されているので、その異常による脱毛は通常広範かつ規則性にみられます。自験例の脱毛は限局性で境界が曖昧、また脱毛以外の皮疹として軽微な紅斑と毛包性角化による毛の淡黄色化がみられました。これらは毛包の病的状態に合致、鑑別疾患として細菌性毛包炎、ニキビダニ症、皮膚糸状菌症を考慮、明らかな毛包炎や表皮病変に乏しいことからニキビダニ症を疑いました。 初診時方針のポイント
ニキビダニ症を疑う事例では、診断として毛包内で増殖するニキビダニの検出と、共生ダニに対する特徴的な宿主反応病変の評価が有用です。前者では皮膚掻爬検査や毛検査が選択されます。皮膚掻爬検査は表皮下毛細血管や末梢神経の破壊を伴います。一方毛検査は毛を抜いて毛包内ダニを検出するので宿主に対する侵襲性が大きくありません。もちろんこれら検査はスクリーニングであって、確定診断にはダニの取りこぼしがなく、皮膚病変を組織学的に観察できる皮膚生検が有用です。なお汎発性や自験例のような進行性の症例では、基礎疾患の評価を目的とした血液検査やX線検査を提案しています。ニキビダニ症では、細菌性皮膚炎のような治療による診断は選択されません。 |