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症例57:耳の結節
(チンチラ,10ヵ月齢,♂)

平成26年10月より飼育、耳漏を認め近医受診、左耳道内を塞ぐ赤い隆起性病変がみられ一部切除、キノロン系の点耳薬と内服で治療するも軽快せず同年12月24日当科紹介受診となった。

臨床診断のポイント

前回に続き結節です。結節は炎症、肉芽腫、腫瘍などで生じます。自験例の結節は耳にみられ、表面は平坦で、外皮に覆われず赤褐色を呈していました。外耳道との癒着もなく、耳道近位から遠位に向かって伸張しています。皮疹から、外耳の肉芽組織とともに粘膜領域の炎症性病変や腫瘍を疑いました。発症が若く、年齢的には炎症や肉芽腫、特に感染症として深在性真菌症や非定型抗酸菌症などが鑑別です。ただしいずれも耳に好発する疾患ではありません。このような皮疹を呈す幼猫の疾患としていわゆる鼻咽頭ポリープがあり、臨床徴候はこれに合致していました。

初診時方針のポイント

耳の評価には視診とともに触診を行います。まず両側の外耳軟骨部、次に上顎後方から指を挿入して鼓室胞に触れ、形態や感覚の異常(痛み、痒み)を検討します。臨床検査として、耳漏の検討には細胞診および細菌や真菌の培養検査が実施されます。ただし検出される細菌や真菌は起因菌ではなく、通常二次的な増殖です。骨部外耳道から鼓室胞の評価にはX線検査、CT検査、MRI検査等の画像検査が有用です。さらに確定診断には生検が実施されます。この場合、治療を兼ねた切除生検が選択されます。