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症例65:肛門のしこり
(ジャーマンシェパード、10歳齢、♀) 2017年はじめご主人の帰宅が遅くなり生活が変化、その後おしりを舐めるようになり同年3月肛囲発赤、一部自壊がみられ貴院受診、エンロクリア、プレドニゾロン、シクロスポリンにて軽快せず2018年1月31日当科紹介受診となった。 ![]() 臨床診断のポイント
肛囲上方左側および右側に不整な隆起がみられます。1cmを超える皮膚の隆起は結節と呼ばれ、成因には炎症、肉芽腫、腫瘍などが含まれます。自験例の結節は病巣の癒合を思わせる不整を呈し、瘻孔形成による潰瘍が散在していました。真皮内多発性病巣の原因として大腸疾患や外傷などとともに、犬種および年齢より肛門周囲瘻が疑われました。鑑別に肛門嚢疾患がありますが、分布位置が異なりました。また肛門周囲腺腫も鑑別ですが、定型は瘻孔を形成しません。鑑別及び合併として感染性肉芽腫にも配慮しました。年齢的には、増悪因子として内分泌疾患、関節症や脊椎症を考慮しました。 初診時方針のポイント
肛門周囲瘻の評価では、直腸検査を行い病巣の分布や程度、肛門狭窄の状態などを検討します。確定診断には、感染症や腫瘍の除外をかねて皮膚生検が実施されます。もちろん感染症には細胞診と細菌培養検査、直腸や排便の評価および合併症の検討を目的にX線検査が実施されます。内分泌疾患に対しては血液検査、ACTH刺激試験、T4測定を実施しています。 |